巡航高度に達したら降下することを考え始めましょう!思った以上に早めに降下しないと、空港までに高度を落としきることができません。
降下自体は簡単な操作ですが、「どこから降下を開始するか」という計算をする必要があります。
今回は伊丹空港への着陸に向けて降下の方法を解説します。
この記事は前回の記事の続きになります。まだ見ていない方はこちらもご覧ください!

降下計画を立てよう
どの高度まで下りればよいか確認する

無事巡航高度FL380(フライトレベル380・38000フィート)に上昇することができました!ただし、のんびりしている暇はありません。降下に向けて計画を立てましょう!
まずは、「どの地点までにどの高度に降下している必要があるのか?」を知る必要があります。たいていの場合、空港までに一直線に下りていくのではなく、空港へ至るコースの途中には「高度制限」や「速度制限」があります。
今回の飛行ルートでこれから先に訪れる高度制限・速度制限を確認しましょう。
実際には航空路の情報が載ったチャートで確認するのですが、今回はMCDUから簡単に確認する方法を解説します。
飛行ルート上に高度制限や速度制限がある地点はフライトプランの画面で「マゼンタ色のアスタリスク(*)」がついています。

- 「MCDU」の「F-PLN」を押して、フライトプランを表示させます。
- 「上方向キー(↑)」を押して、フライトプランの続きを表示させます。
- 上の画像にあるような「マゼンタ色のアスタリスク(*)」が最初に現れる地点を探します。(今回は「MIRAI(ミライ)」)

- 「MIRAI」の右側のボタンを押します。

- 「ALT CSTR」に表示された数字を確認します。(今回の場合は「+6000」)
- 「SPD CSTR」に表示された数字を確認します。(今回の場合は「なし」)
今回は「「MIRAI」において高度6000ft以上で飛ぶこと」という制限であるとわかります。また、速度制限はないことがわかります。
「MIRAI」から先にどのような制限があるのかも確認しておきましょう。同様の手順で確認できます。


「MIRAI」の先の地点「IKOMA(イコマ)」で「高度制限3500ft以上」という制限があることがわかりました。
今回は、「MIRAI」をピッタリ6000ftで通過するよう降下して、「MIRAI」通過後に「IKOMA」に向けて降下を開始し、「IKOMA」をピッタリ3500ftで通過するようにします。
また、「IKOMA」の地点は空港からだいぶ近いこと、また現実では「IKOMA」には210ktの制限があるので、「IKOMA」通過時には210ktまで減速することとします。
ここで問題となるのは、「MIRAI」までに38000ftから6000ftに降下するにはどれだけの距離が必要なのか?ということです。
降下に必要な距離を計算する

降下に必要な距離を計算するには、A32NXに搭載された「フライパッド」を利用します。
- フライパッドの「計算機マーク」を押します。
- 「Current Altitude」に降下を開始する高度を入力します。(今回の場合は38000)
- 「Target Altitude」に目標の高度を入力します。(今回の場合は6000)
- 画面右に表示された数字(距離)を確認します。(今回の場合は100NM)
今回の場合、降下に必要な距離は「100NM」であることがわかりました。要するに「MIRAI」から100NM前には降下を開始する必要があるということです。
なお、フライパッドと同様の計算をする計算機を当ブログ内に作ってみました。A32NX以外の飛行機を飛ばす等でフライパッドが使えないときはお試しください。

減速に必要な距離を計算する
降下に必要な距離は100NMであることがわかりましたが、それだけでは足りません。今回の場合38000ftから6000ftへの降下中、10000ftのラインを下回ります。10000ft以下では速度制限250ktがあるため、現在の速度から減速する必要があります。減速中は降下率が下がるため、先ほどの降下に必要な距離に減速に必要な距離を足してあげる必要があります。
私はいつも10kt減速するのに1NM必要という考えで計算していますが、今回はざっくりと10NM必要と見積もりました。
降下計画
最終的な降下計画は以下のようになります。
「MIRAI」を6000ftで通過するため、「MIRAI」より110NM(100NM+10NM)手前の地点から降下を開始する。(この降下を開始する地点を「TOD(トップ オブ ディセント)」と呼びます。)
途中10000ftで250ktに減速する。
「MIRAI」通過後は「IKOMA」を3500ftかつ210ktで通過するよう降下と減速を開始する。
どの地点から降下を開始するか(TODはどこか)判断する
「MIRAI」より110NM(100NM+10NM)手前の地点から降下を開始するというのはわかりましたが、その地点がどこなのかがわからないと降下できません。今回は2種類の方法を解説します。
方法1:ND(ナビゲーションディスプレイ)の距離リングを使って判断する

- ND(ナビゲーションディスプレイ)のレンジ選択を使用して、今回の降下距離である110NMが映るよう調整します。(今回は160NMの範囲が映るよう調整)
- ND(ナビゲーションディスプレイ)上の「80NM」の破線と「120NM」の破線のあいだの、4分の3の位置が自機から110NMの距離であると判断できます。(上の図でいう赤色の破線で示したあたり)
このようにNDの表示を調整することで、自機からの距離110NMの距離がわかります。上の画像の赤色の破線の位置にウェイポイント「MIRAI」が来た時が、降下開始地点(TOD)だと判断できます。
方法2:「FIX INFO」を使って判断する
A32NXのバージョンによっては「FIX INFO」という機能が使えます。この機能を使うことでもう少し視覚的にわかりやすくTODの位置がわかるようになります。

- 「MCDU」の「F-PLN」を押します。
- 表示されたフライトプランの一番左上のボタンを押します。

- 「FIX INFO」と表示された右上のボタンを押します。

- 「FIX INFO」のページが表示されます。
- 今回は「MIRAI」を中心に半径110NMの円を描きます。

- 「MIRAI」と入力し、「REF FIX 1」の個所に入力します。

- 「RADIUS」の欄に「110」を入力します。

ND(ナビゲーションディスプレイ)に「MIRAI」を中心とした半径110NMの円が描かれました!
この円と自機が重なる箇所が降下開始地点(TOD)であると判断できます。
降下開始!

「MIRAI」が自機から110NMの位置に来ました!降下開始です!
オートパイロットの設定

- オートパイロットの高度セレクタを回して「6000」を選択します。
- セレクタノブを引きます(下方向の矢印でクリック)

降下を開始しました!
14000ftより降下したら

14000ftになったら、高度計規正値をSTDから現地の高度計規正値に合わせます。今回は「29.92」です。

- 高度計規正値ノブを押します。(上方向の矢印でクリック)
10000ftより降下したら

10000ftになったらランディングライトやシートベルトサインの操作をします。

- 「LAND」のライトを左右とも「ON」にします。
- 「SEATBELTS」を「ON」にします。
250ktに減速する

10000ftで自動的に250ktに減速しない場合は、手動で減速しましょう。
- 高度セレクタノブを回して10000ftを選択し、ノブを引きます。(下方向矢印でクリック)
- 速度セレクタノブを回して250ktを選択し、ノブを引きます。(下方向矢印でクリック)
- 250ktに減速できたら、再度高度セレクタを6000ftに設定して降下しましょう。
無事降下完了!

無事、「MIRAI」前に6000ftに降下することができました!
ちょっと早く降りすぎてしまったかもしれませんが、降下できないほうが問題なため、これで良しです!
今回のフライトでは風を無風状態にしているなど理想的な条件にしています。リアルウェザーで飛ぶときなどは、追風や向かい風の影響を受けます。追い風の時はもう少し降下距離等が伸びるなどの補正が必要です。
次回は「MIRAI」から空港に着陸するまでを解説します!
