一部の空港では「ILS」が設置されておらず、ILSアプローチが利用できない場合もあります。このような場合でも「RNAVアプローチ」が設定されている場合がよくあります。RNAVアプローチはILSなどの空港に設置された設備に頼らず、GPS情報を参考にしながらアプローチしていく方法です。
ILSアプローチでは電波を捉えながら飛行するという性質上、滑走路に着陸するまでに長い直線を飛行する必要がありますが、RNAVアプローチではGPS情報をもとに飛行するため、直線的に飛行しなければならない理由がありません。このため、曲線的に滑走路まで飛行できるメリットがあり、山間部の空港など山を避けながら飛行する必要がある空港などでも安全にアプローチできます。また、ILS装置を設置できない小規模な空港でもRNAVアプローチを設定すれば安全にアプローチ可能です。
このようにILSアプローチと同等かそれ以上に便利そうなRNAVアプローチですが、デメリットもあります。それはGPS情報をもとにしているため、飛行機に搭載されたGPS受信機の性能や気象状態などによって「精度」がぶれたり悪かったりすることです。
このようにRNAVアプローチはILSアプローチに比べて精度が悪いため、ILSアプローチのように滑走路ギリギリまでオートパイロットで飛ぶことはできません。ただ空港にもよりますが、滑走路高度まであと500ftぐらいの状態でほぼ真正面に滑走路を捉えることができます。ここでオートパイロットを切れば少しの操作で滑走路に着陸できます。
ILSアプローチとRNAVアプローチの両方ができるようになれば、ほぼすべての空港に着陸できるようになるといっても過言ではありません!
今回はFENIX A320でこの「RNAVアプローチ」にチャレンジしてみましょう!
チャートでRNAVアプローチの概要を確認しよう
今回は「北九州空港(RJFR)」の滑走路36に設定された「RNAV(RNP) RWY36」アプローチを利用します。
北九州空港は1本の滑走路を持つ空港で、RWY18側にはILSアプローチの設定があるのですが、逆側のRWY36にはありません。このように滑走路の片側にしかILSがない空港は多いです。
早速、チャートを見てみましょう。なお、このブログではチャートの引用は必要最低限にとどめます。お手数ですがすべてを閲覧するために「AIS JAPAN」への登録をお願いします。(無料です!)
上記の図が「RNAV(RNP) RWY36」アプローチの図です。ILSアプローチに比べてかなり曲線的なことがわかりますね。
右上の「ASARI(アサリ)」からアプローチ開始です。この時の高度は「4000ft以上」が指示されています。
数字の下に線が引かれている場合は、「その数字以上」を表します。そのため、4000と書かれていたら「4000以上」という意味です。
なお、数字の上下に線が描かれている場合は「ピッタリ」という意味になります。また、数字の上に線が引かれている場合は「その数字以下」という意味です。
「ASARI」を4000ft以上で通過したら、「FR690」「FR691」となんとも味気ない名前のポイントを飛行していきます。「FR691」には「速度制限:最大165kt」があるのでアプローチ中は気を付けることにしましょう。
「FR691」を通過後は大きく右旋回して「FR692」に向かいます。このタイミングで滑走路を真正面に捉えることとなります。このポイント以降はオートパイロットを切って着陸しましょう。
なお上記の図には表れていませんが、「FR690」以降は降下角度3度で降りるよう指示があります。FENIX A320ではこの降下管理が完璧といっていいレベルでシミュレートされているため、自動操縦にしておけば気にする必要はありません。(逆に言うとA32NXでRNAVアプローチが不完全なのは、この部分のシミュレートがまだ不完全なためです)
フライトプランの作成
SimBriefで到着空港が北九州空港(RJFR)で、着陸滑走路がRWY36のフライトプランを作成しましょう。お好きな空港から出発してかまわないのですが、もし考えるのが面倒くさいようであれば、以下のフライトプランを参考にしてみてください。
出発空港:大分空港(RJFO)
離陸滑走路:RWY01
離陸経路(SID):EBOSH 2 RNAV DEP
ルート:EBOSH2 YANAI TONOH IWAYA
巡航高度:11000ft
アプローチ:RNAV (RNP) RWY36
着陸滑走路:RWY36
到着空港:北九州空港(RJFR)
備考:AIRAC「2103」と「2205」で上記フライトプランが作成できることを確認済み。
注意:航空路の更新は定期的に行われるため、フライトプラン作成のタイミングによっては上記のプランではエラーとなってしまうかもしれません。ご容赦ください。
simBriefのフライトプラン作成画面の「Route」の入力欄を全部消すと「ENTER YOUR ROUTE HERE」と表示されます。この状態で、上記フライトプランの「ルート」の部分をコピペし、「Analyze Route」ボタンを押すとルートを簡単に設定できます。
MCDUの設定
作成したフライトプランをFENIX A320で読み込みましょう。
読み込んだら、アプローチを「RNAV36」にするのをお忘れなく!また、読み込んだフライトプランがちゃんと一本の線でつながっているか確認しましょう。
アプローチ開始高度の設定
先ほどのチャートによると、アプローチの開始点である「ASARI(アサリ)」を4000ft以上で通過すること、と書いてありました。
MCDUの「F-PLN」を見てみると、「ASARI」を4412ftで通過する見込みであることがわかります。4000ft以上となっているため基本的には問題ないのですが、RNAVアプローチに慣れないうちはアプローチの開始点は「指示された高度ピッタリ」で飛行することをお勧めします。こうすることで、無駄に高い位置から降下することが無くなり、速度管理などがしやすいためです。
ということで、「ASARI」を4000ftピッタリで飛行するようコンピューターに指示しましょう。
- MCDUの「F-PLN」から「ASARI」を選択します。
- 「ALT CSTR」に「+4000」と書かれていることを確認し、右側のボタンを押します。
- 「ALT CSTR」の数字を「4000」と入力します。
- 「TMPY INSERT」を選択します。
- ASARIでの高度が「4000」になったことを確認します。
これでRNAVアプローチの下準備は完了です!あとは今までどおりフライトを開始しましょう!
RNAVアプローチ開始!
「ASARI」直前まで来たら、いよいよRNAVアプローチを開始しましょう!手順は簡単ですよ!
まずは、「アプローチフェーズ」がアクティベートされているか確認しましょう。アクティベートされていない場合は手動でアクティベートしましょう。その後「APPR」ボタンを押すことでRNAVアプローチを開始できます。
- MCDUの「PERF」を押します。
- 上記の画像のように「APPR」と緑文字で書かれていたらアプローチフェーズがアクティベートされています。
- もしアクティベートされていないようなら、「ACTIVATE APPR PHASE」を押しましょう。
- 「APPR」ボタンを押します。
- NDの表示が変化し、飛行経路に対して垂直方向と水平方向にどれだけズレているかの表示がされます。
これでRNAVアプローチが開始されます!これだけです!意外と簡単でしょ?あとは勝手に滑走路まで近づいてくれます。
ILSアプローチと同様に、減速しながらフラップやギアを展開して着陸準備を整えましょう!
今回のアプローチでは、ほんのちょっとだけオーバーシュートして滑走路の左側寄りになってしまいました。もうちょっとだけオートパイロットで飛行すれば、より滑走路真正面に近づいてくれるでしょう。
ただ、冒頭でも書いたとおり、ILSよりも精度が低いアプローチ方法になるため、少なくとも300ftから500ft上空でオートパイロットを切って着陸しましょう。
オートパイロットを切った後は微調整を行って着陸です!ILSアプローチと同様にあまり計器を追わずに滑走路全体を見ながら着陸しましょう!
以上、RNAVアプローチの方法でした!基本的にはILSアプローチのやり方と変わらないことがわかったと思います。(むしろILSアプローチで必要だった「LS」ボタンプッシュが必要ないため、より簡単ともいえる)
RNAVアプローチができるようになれば、降りれる空港がかなり広がりますのでぜひチャレンジしてみてください!